先日Calvin RidleyがTENと契約したことでJAX界隈では大きな騒ぎとなっていました。現地記者は特にこれにがっかりしていたようでしたが、ファンはそこまで気にしていない感じでした。僕もどちらかというと後者の方です。そしてその後のArmsteadのニュースでそれは正解だったと現時点では確信しているのですが、シーズン始まってみないとわかりませんね。
まず結果だけを見れば今回のRidleyのトレードは誰の目から見ても失敗に終わったと言っていいと思います。2023年5巡と2024年3巡を使って1年レンタルした結果プレーオフすら逃しているわけですからね。とはいえこのトレードはもともとギャンブルだったので、この結末は結果論に過ぎませんしこれだけではBaalkeを責めることはできないでしょう。ただ、打てる手がなかったわけではないのでそれを行わなかったことについては責任はあると思います。
ということで今回はこの1件について簡単にまとめておきます。
トレードの条件
そもそも事の発端は一昨年のシーズン中に突如成立したトレードです。トレードに至る経緯や詳細については以下記事をご参照ください。
そこで以下の2つの指名権がトレードの対価となっていました。
Year | Condition | Pick |
---|---|---|
2023 | 期日までに復帰 | →5R |
期日までに復帰できず | →6R | |
2024 | 2023年のRosterに残る | →4R |
プレータイムの条件を満たす | →3R | |
契約延長する | →2R |
まずRidleyが2023年のリーグ開始とほぼ同時に復帰が認められ、2023年5巡が確定しました。そして2023年シーズン終了時に十分な条件を満たしたため2024年3巡も確定となっていました。しかしリーグの開始日、FAの正式な開始日までに契約延長を行った場合に2巡に上がる、という条件がありました。
JAXの選択肢
RidleyもJAXに残りたいと言っており、JAXも残ってほしかったにも関わらずシーズン終了後にすぐに契約延長しなかった理由はここにあります。JAXの選択肢としては基本的には以下の2つとなります。
- 新リーグ開幕前に契約延長する →2巡を失うが他チームとの競合なく確実に確保できる
- 2024年のリーグが開幕してから再契約する →3巡で済むが他チームと競合するため確実性はない
JAXとしては2巡を渡さないことを優先したため2.の選択肢をとりました。それはあくまで他のチームにとられないことを前提とした”賭け”ですので、今回はそれに負けてしまった、ということになります。ここまでの額を出されることを予想しなかったか、もしくは他からオファーがあってもJAXを優先してくれるだろう、と高を括っていたのかもしれません。
個人的な考えとしてはもちろんRidleyと契約ができればそれが一番だったと思います。しかし、TENの4年92Mという額を出してまで確保する価値があったかと言われるとそうは思いません。
実際JAXでは1016yds、8TDともちろんいい結果ではありますが、期待したものと比較すると正直劣る部分があります。ドロップ率も8.4%と高く、特にクラッチなシチュエーションでのドロップは目立ちました。もちろんブランク明けのため、2年目にはさらにスタッツが向上する可能性は高いですが、あくまで可能性の話で確実性はありません。さらに今までのスタッツを見るとATLでの直近2年はほぼ全休、その前にWRとして大ブレイクしていますが、1000yds超えは2回のみ(1、2年目はJulio JonesというモンスターがWR1だったためですが…)と多くなく、安定はしていません。また年齢も今年度で30歳とWRとしてはターニングポイントに差し掛かっています。最近契約延長となったMike Evansは1つ年上ですが、デビューから10年間連続で1000yds超えという快挙を成し遂げている誰もが認めるリーグトップのWRです。その彼もTBに残りたい、ということでディスカウントはあったと思いますが、2年41Mという契約となりました。
それらを考慮すると、長期契約を結ぶことでパフォーマンスが落ちて不良債権となってしまう可能性があることからせいぜい2年、さらに金額としても年平均16-18Mくらいが妥当なのではないか、と考えました。ちなみにSpotracでは年平均17.5Mという予想となっていました。そこから考えるとやはりTENが出した金額というのは多いとは思います。
もちろんRidleyのWRとしての能力には疑いようはありませんし、少なくとも来年はトップレベルのWRとして十分脅威だと思います。特にルートランニングは素晴らしくカバーするのはかなり苦労するでしょう。TENでの会見でも実年齢は29歳だけど25歳くらいの気持ちだ、的なことも言っていますし、確かにブランク2年というのは言い換えれば消耗していないということにもなるので思ったより加齢の影響は少ないのかもしれません。そう考えれば複数年でも衰えずにやれる可能性はあると思います。
あとは会見にてJAXの使い方が悪かったといったことも言っていたみたいですが、それも大いにありそうです。OC出身のHC Callahanのもとでならもっと活かせるのかもしれませんね。
TENはキャップにも余裕があるためそれらを期待して高額の契約をしたのだと思いますが、JAXのキャップ事情を考えればそこに賭けるのはリスクが高かった、ということですね。
第3の選択肢
と、ここまでであれば仕方ない、という話になるのですが、実は第3の選択肢として
- フランチャイズタグを指定してから新リーグを迎え、その後に契約延長する
というものがありました。フランチャイズタグは2巡の条件に入らないのかというのははっきりはわからないのですが、少なくとも現地記者やメディアの見解では問題ないとのことでした。
ところがここで問題となったのがJAXのスタープレイヤーJosh Allenの存在です。2019年ドラフト1巡で、5年目オプションを適用されて臨んだ2023年に17.5サックというリーグ2位タイの活躍を見せリーグトップレベルのEDGEであることを証明しました。フランチャイズタグは1人にしか適用できませんので、どちらかにしか使うことができません。そうなると優先したのはAllenとなりRidleyにはタグを適用できませんでした。
ただこうなることは最初から予想されていたことです。本当にRidleyを残したかったらAllenとの契約交渉をもっと早くから始めて延長してからRidleyにタグ指定すればよかったのです。これはBaalkeのミスなのか。
それを考えてみると、情報によればJAXは20M弱の額を提示していた、とのことですが、2024年のWRのフランチャイズタグはOverTheCapによると21.8Mとなっています。だいたい契約更新はフランチャイズタグよりも高い金額でされると思います。そうなるとそもそもこれ以上の額で契約する気は全くなかったからタグも指定しなかった、ということなのでしょうか。それ以上のチームが現れたら仕方ないくらいの気持ちでいたのかもしれません。まぁ真相はわかりませんがそういうことなら納得です。
これからのこと
なので、ここまではダメージを最小限にとどめるためにいい選択をしていると思います。そして大事なのはここからです。まずこの契約が決まった直後に方針を変更してDL Arik Armsteadの獲得に乗り出し無事獲得したというのは称賛に価すると思います。そして次に考えるべきは当然WR1についてです。さすがにGabe Davisを獲得したとはいえWR1不在ではきついです。考えられる選択肢は①FA、②トレード、③ドラフトのどれかになります。
①で考えられるのはLACからリリースされたMike WilliamsもしくはMichael Thomasですが、二人ともケガにより出場できない可能性が高くエースに据えるにはリスクが高いでしょう。特にThomasは2019年を最後にほぼまともに稼働できていません。
②の候補としては、CINにフランチャイズタグ指定されたもののトレードを要求しているTee Higgins、SFの5年目WRであるBrandon Aiyukとなります。特にHigginsはカレッジでLawrenceとプレーしていたこともありそのタッグ再結成が期待されていますが、今の状況を見ればあまり現実的ではないでしょう。というのは結局トレードした後に新契約を結ぶ必要がありますが、Ridley以上、25M/Yrを超える契約は確実です。来年にはLawrence、Campbell、Ciscoといった主力の延長が控えていますし、Allenの延長もこれからです。FAでも大きく補強しているのでそれに加えてこの大型契約を行ってしまえば首が回らなくなってしまうことが予想されます。今年SBを狙うためにオールイン、というならわかりますが残念ながらそれが狙えるチームにはなっていないので厳しいでしょう。
そうなると③が一番現実的だと思います。幸い大きなニーズとされていたIOL、DL、CBについては最低限の穴埋めができています。また今年のドラフトではWRは豊作と言われています。17位と決して高い順位ではなく、Marvin Harrison Jr.、Malik Nabers、Rome Odunzeのトップ3には届かないですが、Brian Thomas Jr.は狙える位置にいます。また、1巡を逃したとしても第2陣の選手でも今後WR1を狙えそうな逸材はいるのでチャンスはあります。
ただ下記のようにBaalkeは今までSF時代を含めまともなWRを指名したことがなく、それは大きな懸念点ではあります。今年はAssistant GMのEthan Waughもいるのでなんとか当ててもらいたいです。
Every WR #Jaguars GM Trent Baalke has ever drafted: pic.twitter.com/nUsBGuHJ5b
— John Shipley (@_John_Shipley) March 13, 2024
ただ正直なところ、なんとなく1巡指名はしないんだろうなぁという気はしています。がっかり指名になりそうで怖いですね。
まとめ
なんかいろいろ言われていますが、結局のところ最初からJAX的には2巡を守りつつ安かったら再契約するつもりだったけど高かったから撤退したということなのかもしれません。それなら納得です。
大事なのはここからの選択を間違えないことだと思っています。戦力的には明らかに足りていないのでそれをちゃんと認識した上で適切な補強を行ってもらいたいです。
そしてなんだかんだ言いましたがRidleyには1年間わくわくさせてもらったしJAXに来てくれて最後までJAXに残りたいと言ってくれて感謝してます。そして高額契約おめでとう。金を選んだとか言われるかもしれませんがビジネスなのでそれは当然です。TENでもJAX戦以外ではたくさん活躍してほしいと思いますし、これからも応援してます。