Jaguars Note

NFL Jacksonville Jaguars(ジャクソンビルジャガーズ)の応援ブログ

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新OC

OCですが、以前から噂のあった彼に決まりました。PHIではかなり評判は悪いのですがなぜ悪いのかも含めて、改めて調べてみました。ちなみにPressっていう名前はどうやら珍しいようでPGCとなったJim Bob Cooterと合わせてネタにされているようですが、日本人の感覚だとあんまり違和感ないですね。

 

Press Taylor  34歳

選手時代

Butler Community Collegeという短大でスターターQBとしてNJCAAナショナルチャンピオンシップを2連覇し、短大のQBランキングで2位になりLuisvilleやColorado Stateからの関心を抑え、Marshall Universityへ進学しバックアップQBとして2年間所属した。

コーチ時代

2011年にTulsa大のコーチングスタッフ(Offensive Graduate Assistant/QBコーチ)としてHC Bill Blankenshipの下で2シーズンを過ごした。

2013年にChip KellyのHC就任とともにPHIのOffensive Quality Control Coach(OQCC)に採用された。

2016年にKellyが解雇されDoug PedersonがHCとなった後も彼は残留し、新OCであるFrank Reichの下、OQCCに加えてAssistant QBコーチも兼任。そこで後述のPhilly Special誕生に関与。

2018年にはMINのOCとなったJohn DeFilippoに代わりQBコーチに昇格。

2020年にはPass Game Coordinator(PGC)の役職も兼任したが、チームは4-11-1と不振に陥り、Pedersonが解雇されたと同時に彼もチームを離れた。

2021年に元PHIのOCで現IND HCのReichの下でSenior Offensive Assistantを務めた。

  所属チーム 役職
2011-2012 Tulsa Graduate Assistant
2013-2015 PHI OQCC
2016-2017 PHI OQCC/Assistant QBコーチ
2018-2019 PHI QBコーチ
2020 PHI PGC/QBコーチ
2021 IND Senior Offensive Assistant

 

Chip Kellyとの出会い

そもそもなぜ彼がTulsa大からいきなりNFLのPHIに採用されたのかという話。

2012年の夏、当時Oregon大学のHCだったKellyは、MIAのコーチングスタッフの友人を訪ねてMiamiに行った。友人がミーティングから抜けるのを待って施設内をウロウロしていたときに、MIAの新QBコーチであるZac Taylorのオフィスに立ち寄った。
その時、たまたまそこにいたのが当時Tulsa大のGraduate Assistantをしていた弟のPressだった。彼は夏休みで兄のもとに訪れていた。彼らはその場で数時間フットボール談義をしたとのこと。

また、Oregon大学でKellyのGraduate Assistantを務め、そのオリジナルスタッフとしてPHIのAssistant OLCとなったGreg Austinが偶然にもNebraska大学でZacのチームメイトだったことが判明。そこでAustinがPressの名前を出したところ、KellyはMiamiで彼と話したことを思い出し彼にOQCCのオファーを出し、すぐにPressは承諾の返事をした、とのこと。

Philly Specialの誕生

上述の通り、第52回SBでのPhilly Specialに彼が関与したとのことだが、当時MVP級の活躍をしていたフランチャイズQBのWentzが怪我をしてバックアップであるNick Folesで戦わなくてはならなくなったあと、Reichが彼のオフィスに来て、「なにかエッジの効いたガジェットなプレーが必要だ。なにかベストなアイディアを5つ教えてくれ」と言い、そのとき提示したアイディアの一つがPhilly Specialだった、とのこと。オリジナルではなく、NFLやカレッジのフィルムを研究した結果、2016年のCHI対MINのプレーからインスピレーションを得た、とのことだが、それがフォーメーションやTrey Burtonのような選手がいることでフィットしていると考えたよう。「私がしたことは、他の誰かが実行したプレーを提示しただけで、オフェンススタッフ全員がその時の我々のオフェンスにあったものに成形し、最終的にはFolesがそれを提案しPedersonがコールし、選手たちが完璧に実行したんだ」と述べている。

兄 Zac Taylor

彼の兄は今年有名になったZac Taylor。そう、SBに進出したCINのHCである。

彼とPressは仲が良いようでアメリカではそれが当然なのかもしれないが、家族ぐるみでしっかりと付き合いがある様子。そんな兄がどこかのインタビューでPressのことを以下のように語っていた(訳がおかしかったらすみません)。

「Pressはこのリーグで最も鋭いコーチの一人だと思う。私は彼とほぼ毎日話しているが、彼と働いてきた人々は皆彼と仕事を続けたいと思っていると信じている。私は彼が本当に難しい立場で常に自分を貫いてきたことを誇りに思っている。彼の誠実さと人柄は、いつも輝いている。彼は本当に優れたコーチの周りにいて、一緒にいる選手やコーチに強い印象を与えている。スカウトやコーチはいつも私を引き止め、兄として誇りに思うような素晴らしいことを話してくれる。だから彼が今のようなポジションにいるのは当然のことだ。彼が関わった人たちは、彼のことをとても高く評価しているのだから。」

なぜPHIからの評判が悪いのか

上記まで見ると良いコーチじゃないか、と思うだろう。しかし、PHIファンの中での評価はとても悪い。それはなぜなのか。

2020年の4-11-1という不振の後にPedersonがオーナーのJeffery Lurieと面談したが、その際にPedersonが提案したオフェンスの改善というのがPassing Game CoordinatorであるPress TaylorをOCに昇格させる、というものであり、それがオフェンスの刷新を望んでいたLurieにとっては緊急性に欠けているとして解雇となったらしい。その他ディフェンスやSTのことももちろんあったようだが。

実際の2020年シーズンのPHI、Wentzのパス成績はざっと調べただけでも下記の通り。この年は見るのも地獄だった。※データはPFRより

Passer Rating 34位
Passing Yards 28位
Passing TD 24位
INT 31位
Yards/Att 32位
Comp% 34位
3rd Down Conversion 28位
4th Down Conversion 27位
Sack 1位

もう少し調べればもっとひどいはず。こんな成績でOCに昇格なんて言われたらそれはクビになるのも無理はない。

Pressは過去5シーズン、Wentzの育成に尽力してきた。PressとWentzはフィールド内外で絆を深めていたが、それが”コーチと選手”というよりは”友達のよう”だったとのこと。それによりPressは他のオフェンスの選手からも「Wentzを十分に厳しく指導していない、アプローチが”ソフト”だ」とWentzの扱いについて反感を買っていた。ただそれはPressだけの話ではなくPedersonもWentzに対して甘く、シーズン11試合を通してTO、INT、Sackでリーグトップだったにも関わらずWentzのベンチ入りを拒否し、最終的にWentzをベンチにしたときもWentzの気持ちを考慮し、ルーキーのJalen Hurtsが対GB、NO戦で輝きを放ったにも関わらず先発QBを週単位で指名することを選択した。まぁ最終的にはPedersonもWentzに口を出さざるを得なくなったことで「関係は修復不可能」といえるほど拗れてしまったそうだが。そういったこともあり、Pressはじめ何人かのオフェンスコーチはあまり尊敬されていなかった、とのこと。

確かに2020年の成績を見ればだめだということになるが、ここでWentzについて考えてみると、Wentzは2017年シーズンにMVP級の活躍を見せた頃から徐々に態度がでかくなっていったらしい。PressがQBコーチに昇格した後も彼が強く厳しく指導できなかったこともあり、完全にナメられていた様子。その他にもいろいろなことが重なり”Uncoachable”と言われる状態になり最終的にはトレード要求まで至った。

彼はINDへ行った後すぐにReichにWentzトレードについて相談されたらしい。彼もWentzの才能は認めておりそれを承諾したためトレードが実現したよう。その後のINDでのWentzはそこそこの活躍は見せておりたまに全盛期を彷彿とさせるプレーはあったものの2017年のMVP級の活躍への復活はせず。ただ、そこまで悪い成績ではないのにINDが今オフにWentzをカット・トレードするかもしれない、との噂が出てきていることを考えると、やはりWentzの人間性に問題があるのではというのが自分の考え。

ちなみにINDでのSenior Offensive Assistantはどの程度影響を与えるものなのかはわかりませんが、とりあえずINDオフェンスはJonathan Taylorの1811YardsのおかげでRushing Yardsでリーグ2位、Michael Pittman Jr.が1082Yardsを記録して得点数もリーグ9位といい成績を残していました。

現地の反応、個人的な感想

上記を考慮すると、たしかにPressのWentzへのアプローチの仕方は悪かったのかもしれない。ただ、彼がUncoachableだったとすると上記の惨憺たる結果については彼のコーチングとはあまり関係ないところにあるのではないか。そして、今回指導するのはWentzではなくLawrenceである。彼はチームメンバーからの人望もあり、大学の頃あれだけの結果を出していて調子に乗ってないのだからいいやつなんだと思う。なので今回はしっかりコーチングができるはず。さらにアプローチの仕方についても過去の失敗を活かして”コーチと選手”としてのいい関係を構築できる可能性は高い。ただ今回の役職はQBコーチではなくOCなので少し違うかもしれないが…

悪い評判の中にも、PHIの元コーチングスタッフより彼はOCとして成功する素質がある、と言われていたり、当時PHIのOCだったFrank Reichから「Pressはトリックプレーの巨大な金庫を持っている。だから毎週、我々はプレスの金庫に入り、プレーを探すんだ」と言われていたりと評価が高いのも事実。

総合的に判断すると、Pedersonとは長い付き合いだし、2020年の惨憺たる結果についても彼のせいだけとは言えないことを考えると、当初思っていたよりは彼の起用は悪くないのかもしれない。ただ、実際に成績が悪かったことは事実なので、実際にシーズンが始まってからどうなのかを注意してみていきたい。